「わが国の少子化を考える―産婦人科医の重要性―」シリーズ―Ⅴ

妊娠・出産に対する経済的支援
 わが国の女性は結婚しないと子どもを産まない状況にある。わが国のように経済的支援が得られず、女性が一人で子どもを産んで育てられないような状況では、婚外子の養育は困難なことが多い。年間20万例に及ぶ人工妊娠中絶の中には、出産しても養育できないためにやむを得ず中絶するケ-スもかなりの割合で含まれていると思われる。2008年には、出産育児一時金が38万円より42万円に増額され、妊婦健診が14回まで公的助成されるようになった。こうした妊娠時の経済負担の軽減により、2005年に1.26と最低であった合計特殊出生率は微増し、2015年には1.46まで回復した。この微増には、生殖医療の進歩による高齢妊娠出産の増加や団塊ジュニア世代の積極的な出産が大いに関与している。一方で、妊娠・出産時の経済的問題を含めた不安要因の解消により、出生率の低下をある程度阻止できたことを示す一つの証左ともいえる。

(吉村 やすのり)

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