ネット診療市場の伸び悩み

厚生労働省によれば、日本で遠隔診療ができる医療機関は約15%にとどまっています。2021年6月末時点で、ネットでの遠隔診療の登録を届けている医療機関は1万6,872もあります。コロナの1回目の緊急事態宣言下だった2020年4月、国は特例で遠隔診療が初診からできるようにしました。これをきっかけに登録は2カ月ほどで約6,000増えましたが、その後は頭打ちになっています。
一方、コロナ下で急成長した世界のネット診療市場は、さらに膨らむ可能性が大きいとされています。独調査会社スタティスタは、2019年の490億ドルから、2023年に1,940億ドル、2030年に4,590億ドルと予測しています。米国ではネット診療比率が61%と、1年前の約3倍になっています。英国は、国民医療制度(NHS)のかかりつけ医でコロナ前に2割だったネット診療患者が7割に増えたとされています。
ネット診療に及び腰の開業医が多いのは、対面診療より診療報酬が低いのが一因です。経営上は診療項目によって1回あたり数百円から2,000円近い減収になります。米国や英国、イタリアなどは、対面とネットの診療報酬がほぼ同じです。また、そもそも開業医の多くは、広域で競争原理が働くネット診療の普及を望んでいません。
日本は、国民皆保険の下で医療費の自己負担は70歳以上が2割、75歳以上が1割に抑えられています。高齢者らはネット診療による医療効率化に関心が薄いのが現状です。そのうえ経営への影響を懸念する開業医が多く、医療の質の低下につながっていないかといった慎重意見が幅を利かせています。

(2021年10月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。