ミトコンドリア病

 ミトコンドリア病は、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアという微小な器官の働きが弱って起こります。ミトコンドリアは各臓器の細胞質にあります。どこの臓器でどれだけの異常が起きるかによって様々な症状が出てきます。このため、患者によって、脳卒中や心筋症、白内障、肝不全のほか、難聴やけいれん、知能の発達障害などがみられます。国が指定難病として登録する患者は、1,400人程度ですが、実際には10倍以上はいるとみられています。最近の研究ではミトコンドリア病の患者は、5,0007,500人に1人と推定されています。日本には約16,90025,400人の患者がいる計算になります。
 これまで治療法は、発熱やけいれんを抑える薬を投与するなど対処療法が中心でした。最近では、ミトコンドリア病に対する治療薬候補の企業による臨床試験や医師主導治験が進んでいます。しかし、出生後しばらくして亡くなってしまうような重篤なミトコンドリア病に対しては、薬剤投与で治療することは不可能です。英国では、母親の遺伝子異常が子どもに伝わるのを防ごうと卵子核移植が合法化されて議論を呼んでいます。ミトコンドリア病など重い遺伝病の母親を対象に、卵子から核を抜いて健康な女性の卵子の核と置き換える核移植の臨床研究を初めて合法としました。英国のニューカッスル大学のグループはすでに核移植をし、早ければ年内にも赤ちゃんが誕生する見通しです。

(2016年7月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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