リスキリングと労働生産性の向上

ポストコロナの経済回復をにらみ、各国で労働者の能力を高めるリスキリングが活発化しています。リスキリング活況の背景には、技術的失業の懸念があります。米マッキンゼーの予測によれば、AIやロボットが単純労働を代替し、2030年までに世界で最大3億7,500万人が職種変更を迫られるとしています。
デジタル化の担い手不足は深刻です。米コーン・フェリーの予測によれば、2030年に世界で専門人材の不足が約8,500万人に達するとしています。人材不足がなければ得られたはずの約8.5兆ドル(約1,200兆円)の成長機会が失われるとみています。危機感を抱く国、ギャップを埋める努力を惜しみません。

教育投資が充実している国など、労働生産性の伸び率が高くなっています。世界経済フォーラムの発表によれば、将来必要なスキルへの投資の国別ランキングでフィンランドは1位です。デンマークやスウェーデンなど北欧諸国はいずれも上位で、過去10年間の労働生産性の伸び率でトップ集団です。
日本もリスキリングの必要性に気づき、国もようやく重点政策に位置づけています。しかし具体的な取り組みは緒についたばかりで、企業はオンライン講座の導入や資格の学費補助などを進める一方、メニューの提供だけにとどまるケースも目立っています。成果を測って、ポストや賃金に反映する動きは少なく、海外に比べれば周回遅れの状況です。日本は、職業教育への支出が主要国より小さく、生産性の足を引っ張る一因になっていました。リスキリングの導入は流れを変えるチャンスです。

(2022年7月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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