上場企業の株式分割

株式分割とは、すでに発行している1株を複数の株式に分けることです。企業の価値は変わらないため、株式総数が増えた分だけ株価は安くなります。これに伴って、株式を買うのに必要な最低投資金額も下がります。投資金額が限られる個人でも買いやすくなります。東京証券取引所は、2022年に個人が投資しやすい環境を整えるため、最低投資金額が50万円以上の企業に株式分割を検討するよう求めています。
企業が個人株主の獲得に注力するのは、アクティビストの存在感が増すなかで、安定株主になってもらいたいとの思惑があります。株主総会資料などの電子化が進み、株主が増えてもコストがかかりにくくなったことも後押ししています。2022年度の上場企業の個人株主の保有比率は17.6%と、前年度から1ポイント上昇し、個人投資家の日本株離れに歯止めがかかっています。
上場企業の株式分割が株高を下支えしています。2023年度の株式分割の発表社数は、前年度比6割増の191社となり、分割後に個人マネーが流入し、株式売買が活発になっています。相次ぐ分割で最低投資金額は、東証プライム企業の平均で約30万円と、東京証券取引所の求める50万円未満に収まっています。日経平均株価が高値を更新しても、バブル期の1989年末の6分の1以下の水準にとどまっています。
しかし、日本株の最低投資額は、海外と比べるとなお高額です。米国のアルファベットやアップルはいずれも2万円台で買えます。日本は最低投資額が高い銘柄が多く残り、レーザーテックは約410万円、東京エレクトロンは約383万円に上っています。個人株主を増やしたい企業が今後も分割すると思われます。

 

(2024年4月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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