人口オーナス時代にあって

 2050年の人口ピラミッドは、65歳以上の高齢者が総人口の4割近くに達し、労働者1人で高齢者を支えなければならなくなります。少子高齢化対策は、わが国の成長戦略の中で最も優先度が高いものです。安倍政権の新3本の矢では、子育て支援により合計特殊出生率を現在の1.4程度から1.8に回復させる目標が掲げられています。加えて教育などを通じた人材力の強化、女性や高齢者の活躍推進など労働力不足を補う様々な施策が考えられています。しかし、既に深刻化している人口オーナス時代に向かう流れを変えることは困難です。
 この時代に最も有効な対策と考えられているのが、外国人労働者の受け入れです。戦後最大のGDP600兆円の実現に向け、成長を切り開く人材の育成・確保の一環として、高度外国人材のより積極的な受け入れ・活用が必要となります。そのためには、魅力的な入国・在留管理制度や生活環境の整備、外国人留学生・海外学生の本邦企業への就職支援強化、グローバル企業での外国人従業員の受け入れなど、戦略的な仕組みはいずれも推進しなければなりません。ただ、わが国では外国人労働者の積極的な受け入れに対しての抵抗感は強いものがあります。
 厚生労働省がまとめた昨年10月末時点の外国人雇用の届出状況によると、日本での外国人労働者数は前年同期比15%増の約91万人となり、2007年に届け出が義務化されて以来、過去最高となっています。今日、外国人労働者の存在は、地域・産業で必要不可欠なものとなりつつあります。今後も更なる外国人労働者の受け入れ拡大の余地が残されています。これまでは受け入れてきた外国人労働者には、短期的な雇用の調整弁としての役割を期待していました。今後は少子高齢化という中長期的な課題を克服するという観点からの受け入れを考えていかなければなりません。

(2016年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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