保育園や学校の騒音レベル

 世界保健機関(WHO)は、環境騒音の指針で子どものための音環境の基準値を定めています。欧米各国も乳幼児の言語能力の発達上、保育空間の音響設計は重要として数値基準や法令を持っています。しかし、日本では日本建築学会の学校施設向けに定めた吸音指針のみで、法規制も保育施設向けの基準もありません。文部科学省は学校の教室内の騒音レベルの基準を定めてはいますが、外からの騒音を防ぐためで、室内の騒音源は想定していません。
 わが国では保育園に基準はありません。最近はフローリング床の保育園が増え、音がより反響しやすいこともあります。中で働く保育士らは、大人数の子どもがいて騒がしいのは当然と感じています。4、5歳前後で雑多な音から、自分への声かけなど必要な音を聞き分ける力がつきますが、0~4歳に雑音の中で育つと判断しづらくなるとされています。情緒面への影響も否定できません。保育園や小学校低学年は、子どもの言語や感受性が最も育つ時期です。この時に過ごす場所の音環境は、将来の学習能力と無関係とは思えません。

(2016年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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