働き方改革の必要性

 少子高齢化で人口が減る中、働く人一人ひとりの力を最大限に引き出すにはどうすればよいかを真剣に考えなければならない時代に来ています。まず、働く意欲のある人がしっかり働ける環境を整える必要があります。長く会社にいる人が評価される仕組みを改め、企業は働き手にどんな仕事をしてほしいか、それにはどのくらいの給料を払うのかを明確にすべきです。短時間勤務や子育てサービスの充実など、個人の働きやすさを増す取り組みを進め、介護や育児など家庭の事情から、離職する人を一人でも減らすことが大切です。正規や非正規、年齢差や性差に関係なく、働き手自身が自らの体調や生活に即した働き方を選ぶことが必要になります。
 わが国の労働生産性は、欧米諸国に比べて決して高くありません。労働生産性を向上させるためには、長時間働く慣行は断ち、時間給制度の廃止など高度で優秀な人材の力を引き出す工夫が必要となります。従業員の成果次第で賃金差がついたり、正社員でない働き手を重用してもよいと思います。年功に即した評価や働いた時間による厚遇は避けるべきです。終身雇用は企業にとっても、働き手にとっても安心な仕組みです。しかし、企業は状況に応じ、優秀な人材を登用できる果断さが問われています。有能な人材を社内外から登用しなければ、企業は生き残れない時代になってきています。
 働き手の愛社精神や自己犠牲に甘え、長時間、低賃金で働かせている企業はいまだに少なくありません。これでは生産性は上がりません。企業には、研究開発や能力向上を目的に長期的な視点で人材育成に力を注ぐ姿勢が問われています。人材資源の育成により技術革新を起こし、世界トップクラスの労働生産性を達成しなければ、国の成長を維持することをできません。労働時間の規制に加えて、労働市場の流動性を高める政策を進めなければ働き方改革は完結しません。

(2017年2月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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