働く高齢者の増加とリスク

総務省の調査によれば、65歳以上の高齢者のうち、昨年仕事をした人の割合は25.1%で、10年前より5.9ポイント上昇しています。働き手全体に占める割合は13.5%でした。雇用形態は役員などを除く雇用者517万人のうち、パート・アルバイト・契約社員などの非正規雇用が75.9%を占めています。
働く理由としては、経済上の理由が76.4%と最も多く、生き甲斐、社会参加のための33.4%、時間に余裕があるからの22.6%を大きく上回っています。人手不足の中、高齢者が経験を活かして働くことは、企業にとって利点が大きく、本人にとっても、働くことで存在価値が認められ、精神的にも健康を保つ効果があるうえ、国の医療費の削減にもつながります。
高齢者はその多くが非正規雇用で、体力が落ちていて労働災害のリスクは高いのに十分な保護がされていないといった課題も指摘されています。雇われて働く雇用者のうち、60歳以上の割合が18%なのに対し、休業4日以上の労災の死傷者数に占める60歳以上の割合は26%にのぼっています。特に墜落・転落や転倒の事故が、高齢になるほど増える傾向にあります。
実態は労働者なのに、形式的には独立して仕事を請け負う業務委託契約で働いているため、労災が申請できないなどの不利益を受けている人もいます。使用者にも、業務の軽減や配置について高度な安全配慮義務が課されるべきです。

(2022年10月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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