児童虐待

 社会保障審議会児童部会専門委員会の報告によれば、虐待で亡くなった18歳未満の子どもの数は年々減少しています。2003年から2015年までの虐待死亡事件626件の分析によれば、0歳児が45.2%を占めています。死亡例は4歳児までで8割強にまで達しています。主たる加害者は、実母であることが多く、育児放棄などのネグレクトが27%も占めています。核家族化が定着し、育児に悩む若いカップルが増えています。0歳児の虐待が多い事を考慮すれば、出産前後から乳児期の育児支援が極めて大切です。
 小児発達学の友田明美教授らの研究によれば、子ども時代に性的虐待、暴言、激しい体罰のいずれかを受けた人の脳を調べたところ、受けた虐待によって脳の別々の部位の発達に悪影響が見られるそうです。性的虐待を受けた人は、目の前のものを見たり、視覚的な記憶形成と深く関わっていたりする視覚野の容積が通常より減少しています。暴言を受けた人は、コミュニケーションに重要な役割を果たす聴覚野の一部が変形します。激しい体罰を受けた人は、感情や思考をコントロールし、犯罪の抑制力に関わる右前頭前野内側部の容積が萎縮しています。このように子ども時代に受けた虐待は、脳に器質的な障害をもたらします。

(2016年11月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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