出生前遺伝学的検査(NIPT)の新たな体制

妊婦の血液からおなかの赤ちゃんの病気を調べる出生前遺伝学的検査(NIPT)では、21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー、13トリソミーなど三つの染色体異常を調べます。これまでは原則35歳以上の妊婦が対象でしたが、年齢を問わず、検査前に遺伝カウンセリングを受け、それでも赤ちゃんの病気について不安を持つ妊婦も対象になります。

遺伝カウンセリングでは、遺伝医学の専門家が、検査の対象となる病気や社会福祉の支援態勢を説明し、相談にのります。羊水検査などを経て陽性が確定した人の9割は中絶を選んでおり、重い判断を伴う検査だから、前後のカウンセリングなどの相談態勢が重要となります。
このNIPTは、採血だけで調べられる手軽さもあり、内科や美容外科クリニックなど関連学会が認めていない施設が検査を行うことが増えてしまいました。遺伝カウンセリングもなく、利用者が赤ちゃんに病気の可能性があるという結果だけを伝えられ、戸惑うというトラブルも多数報告され、今や大きな社会問題となっています。
いま実施が認められているのは、大学病院など全国108カ所の医療機関です。しかし、臨床遺伝専門医の資格があったり、専門の研修を受けたりした常勤の産婦人科医がいることを条件に、地域の産婦人科も認めることになっています。日本医学会の中に出生前認証制度等運営委員会ができ、国民に向けた情報提供や施設認証などを実施することになっています。この運営委員会には、厚生労働省もオブザーバーとして参画しています。施設の認証が終わった後、この仕組みは、なるべく早い時期に始まる予定です。
このNIPT検査は、障害のある人への差別につながる心配も指摘され、検査が広がることに慎重な声もあります。障害や病気のある子を育てる家庭への支援態勢の充実は大きな課題です。認証施設の遺伝カウンセリングの質をさらに高める必要もあります。

(2022年4月13日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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