医療の不要不急とは

3月の医療費の総額は、1兆1,257億円、患者が医療機関にかかった件数は9,415万件で、前年同月と比べると、医療費の1.3%減に対し、件数は11.5%減と大きく落ち込んでいます。3月は初旬こそ外出を自粛する空気は強くありませんでしたが、半ば以降はイベントや会合の中止が相次ぎました。通院の見合わせや先送りをする患者が目立ち始めたのはこの頃です。4月、5月は医療費の落ち込みは激しく、病院経営は大変厳しい状況に陥っています。
これまで医療には不要不急はあり得ないと考えられてきました。しかし、慢性疾患を抱えた高齢者は通院を見合わせ、病院は新型コロナ患者への処置に追われ、手術や検査を延期するなどの対応を取らざるを得ない状況にありました。大規模な総合病院でも、外来患者が急減したり、不急の手術を先送りしたりして、収入の落ち込みが目立つようになってきています。コロナ禍という特異な状況のもとで、専門性や診療科の違いによる繁閑の差が広がっています。コロナ禍での医療を通して、不要ではなくても受診が不急であるケースがあることを知らされました。
緊急事態宣言下においては、厚生労働省は、重篤・重症のコロナ感染者を受け入れ専門治療にあたっている大学病院などに対し、特例としてICUの入院料を2倍に上げています。採算は改善せず、コロナ対応病院の経営はおしなべて苦しい状況に陥っています。隔離用の陰圧病室を新設したり、空き病床を確保したりするコストがかさむからです。政府・与党が編成に着手した2020年度第2次補正予算案では、コロナ対応病院への資金援助が欠かせません。
地域診療所においても、日本医師会は2次補正に資金援助を計上すべく厚生労働省への働きかけを強めています。省内には初診・再診料の加算を模索する動きもあります。診療報酬を上げるなら、オンラインの初診・再診料を増やし、コロナ後も見据えた新しい医療態勢を構築すべきです。
感染の長期化や、第2波に備え医療体制の再構築が必要となります。4月の感染拡大のピーク時には、東京都や大阪府などで重症患者の病床が逼迫しました。地域の重点病院で専用病棟を多く設置できるようにするほか、コロナ患者を受け入れる医療従事者に対する支援策を考えなければなりません。これまで医療費の増大を防ぐため、感染症対策は不要なものとして蔑ろにされてきました。この新型コロナウイルスは、人材配置を含め、医療資源を最適配分するための資金援助の必要性を教えてくれています。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。