医療費の抑制

 医療費の高額化が、わが国の財政を危機にひんする要因の一つとなっています。その主因は高齢化と技術進歩です。団塊世代の高齢化もあいまって、国民医療費は毎年、数千億~1兆円の規模で増え続けています。日本の医療費は国際的にみてもかなり高水準です。
 日本では、いつでもどこでも医者に診てもらえます。国民皆保険制度が空気のように当然のものになっています。日本の医療制度は、世界に誇る国民皆保険により、患者が自己負担額を意識しにくい仕組みになっています。こうした日本が置かれている状況はかなり恵まれていると言わざるを得ません。しかし、今後はそういうわけにはいきません。調子が悪ければすぐに医者に診てもらうといった国民皆保険下の価値観から、なるべく自分で自分の健康を守るという方向への意識変革が要求されます。これまでの日本の医療は、医療の高品質、安いコスト、アクセスの良さを追求してきました。これが医療費の高額化を抑制することができない大きな理由の一つと考えられます。

(2017年5月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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