医療費の抑制

国民医療費は、2018年度は43兆4千億円で、10年で8兆円余り増えています。後期高齢者医療制度の対象となる原則75歳以上の医療費は4割を占め、年代別で1人当たり医療費は92万6千円と最も高くなっています。保険料以外に公費を投入し、国や都道府県の財政を圧迫しています。政府は、現役世代の負担軽減のため、75歳以上の医療費の窓口負担を1割から2割に増やす法案を今国会に提出しています。

日本経済新聞の47都道府県の75歳以上の1人当たり医療費、死因別の死亡数、健康や医療・介護に関わる調査によれば、医療費が最も低い岩手県は74万6千円、最も高い高知県は113万7千円で約40万円の開きがありました。病床数が多いと医療費が高くなります。必要度の低い入院や長期入院が増えるからです。さらに75歳以上が1万人以上の407市区町村を分析すると、死因で老衰と脳卒中も多いと、医療費が少ない傾向があります。

都道府県別の散布図で、横軸に脳卒中で亡くなる人の多さ、縦軸に老衰で亡くなる人の多さを取ると、左上が脳卒中が少なく老衰が多い目指すべき地域と言えます。男女とも神奈川、愛知、和歌山が左上に入り、75歳以上の1人当たり医療費は全国平均より低くなっています。
医療費が低い地域は、高齢者の就業率が高く、保健所などの保健師が多い傾向にあります。高齢者の働く環境を整え、地域ぐるみで健康を管理することが突然死を減らし医療費も抑え、老衰による最期を迎える高齢者が増える大往生社会に近づくカギとなります。

(2021年5月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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