国家公務員の懲戒処分

懲戒処分を受ける国家公務員の数は減少傾向にあります。2020年は過去最少の234人でした。国家公務員法に基づく懲戒処分は、重い順に免職、停職、減給、戒告の4種類あります。いずれも昇格や給与などに影響があり、訓告や厳重注意は、各省庁の内規による処分で昇給などに関係ありません。
1990年代後半から懲戒処分が年を追うごとに増え出しました。1998年に発覚した旧大蔵省の接待汚職事件は、時の蔵相や事務次官、日銀総裁らが引責辞任し、複数の大蔵官僚が逮捕される事態となりました。大蔵省の汚職問題を契機に、2000年に国家公務員倫理法が施行され、国家公務員は、職務に関わる利害関係者から飲食の接待を受ける行為が禁止されました。利害関係者とのゴルフや旅行も禁じました。しかし、その後も公務員の懲戒は増え続け、2005年に過去最多の3,947人となりました。旧社会保険庁で芸能人らの年金加入記録を業務目的外に閲覧したとして、多くの職員が処分されました。
公務員の倫理観への風当たりは強まっています。人事院が2013年度と2019年度に実施した国民1,000人を対象とするアンケートによれば、一般職の国家公務員の倫理観が、少し悪くなっているや悪くなっていると答えた割合を合計すると、19%から34%に増えています。幹部職員に限ると28%から46%になっています。処分される公務員が減ったからといって、国民が公務員に抱く印象が良くなるわけではありません。国民の体感治安は改善していません。

 

(2021年5月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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