大学病院での脳死移植

厚生労働省の調査によれば、国内にある144の大学付属病院のうち4割の施設が、臓器移植法施行26年で、脳死の人からの臓器提供が1例もなかったこと分かりました。臓器移植法の運用指針では、臓器提供できる施設は、大学附属病院のほか、救急や脳神経の専門的な診療が担える病院に限り、対象は2023年3月末時点で895施設です。しかし、施設間の提供数の差が以前から課題になっていました。
大学病院での最多は岡山大学病院の27例で、東京医科大学八王子医療センターの21例、藤田医科大学病院の19例、北海道大学病院の18例と続いています。上位5施設だけで100例あり、全体の4分の1を占めています。ゼロ施設は59施設で、東京女子医科大学病院や山口大学病院といった大規模病院も少なくありません。

多くの医療現場では、死を前提とした臓器提供という選択肢を家族に示すことに、医療者がためらいを感じています。家族から希望しない限り、臓器提供について語られないことがほとんどです。臓器提供は患者の権利です。本人は話せない状態なので、臓器提供の意思表示をしていなかったか、探すことが大切です。臓器提供の多い施設は、家族へのケアを含めたみとりにも注力している共通点があります。
臓器提供までには外部機関とのやり取りが生じ、2回の法的脳死判定には2~3日かかります。患者はその間、救命救急センターやICUのベッドで診ることになります。しかし、救命救急センターやICUは、元々受け入れ能力がギリギリの状況です。ベッド調整の難しさも臓器提供の困難さの一因となっています。

(2024年3月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。