夫のひきこもりへの対応

2018年度に内閣府が実施した調査によれば、中高年(40~64歳)のひきこもりが全国に推計61万人いることが分かりました。ひきこもり当事者の同居者には、母親が53%に次いで配偶者が36%が多くなっています。現在の世帯構成や当事者に男性が多いことを勘案すれば、核家族の夫のひきこもりが一定数存在すると推測されます。
新型コロナウイルス下で厳しい雇用環境が続き、離職をきっかけとするひきこもり増加の懸念が高まっています。なかでも配偶者、特に夫のひきこもりは、第三者に支援を求める事例が少なく、実態が把握しきれていません。厚生労働省によれば、コロナの影響による解雇・雇止め人数は13万人に迫っています。内閣府調査では、退職がひきこもりのきっかけの36%を占めています。コロナ離職に伴う働き盛りのひきこもり増加は今後の懸念材料です。
ひきこもりには、当事者の現状を肯定しながら、時間をかけて周囲との信頼関係を再構築する対応が求められます。しかし、家計を支える夫のひきこもりの場合は、時間的な猶予が限られてしまいます。経済の壁に阻まれた夫婦は、離婚危機に直面することになります。
事態が深刻化する前に第一に必要なのは、当事者に寄り添う妻や子どもの安心を確保するケアです。家族はまず外部の専門家に支援を求めるのが望ましいとされています。親身な助言を得ながら行政の窓口やカウンセラーの活用を検討します。両家の親に支援を申し出ることにより、孤立感は和らぎ、経済の壁も乗り越えやすくなります。子どもへの配慮も重要です。家族で抱え込まず、早めに救いを求めることが大切です。

(2022年3月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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