女性活躍のためには

働き方改革では、同一労働同一賃金の実現が提唱されています。しかしそれ以前の問題として、男女で同一の職業機会が与えられていないことがより根本的な問題です。日本の男女賃金格差は、経済協力開発機構(OECD)諸国内で韓国に続き2番目です。一つの原因は女性に非正規雇用者が多いことによります。さらに正規雇用者内の男女賃金格差がより大きな原因で、その主な要因は男女の大きな職階格差です。
男女の管理職昇進率も大きな違いがあります。これに最も強く関係するのは残業時間の男女差です。女性が大多数の一般職など、恒常的残業から免除される職につくと、管理職昇進の機会が大きく減少といった企業慣行があります。恒常的残業を時間管理の無能の証しとみる英米と異なり、わが国では管理職候補になるには、会社の都合に合わせ時間的に無限定に働く意思があることが条件になっています。恒常的に残業できない多くの女性は、職務上の能力が高くても管理職に登用されない状態にあります。
シカゴ大学の山口一男教授は、専門職につく女性の割合を検証しています。エンジニア、弁護士、会計士など非ヒューマンサービス系の専門職に大学教員、医師・歯科医師を加えたものを「タイプ1型」、ヒューマンサービス系でかつ大学教員、医師・歯科医師以外の職を「タイプ2型」に分類し、日米で比較しています。タイプ2型は日米ともに女性が20%前後で、男性が4%と少なくなっています。一方、タイプ1型は、男性については日本がタイプ2型の3倍弱、米国が4倍弱と大差はありません。大差があるのは女性割合で、米国は13%ですが、日本は2%以下です。日本女性の専門職はタイプ2型に偏り、タイプ1型は極めて少なくなっています。
この違いが男女の賃金格差に強い影響を与えています。平均賃金は、職業別で高い順に管理職、タイプ1型専門職、タイプ2型です。女性のタイプ2型の専門職の平均賃金は、ブルーカラーを含む男性のどのような職種よりも低くなっています。これらの専門職につく女性が日本の労働市場で極めて低い評価を受けています。日本女性は、管理職が少ないことに加え、職は非正規雇用、一般事務、そしてタイプ2型の専門職に大きく偏っています。固定的な男女の役割分業に近い状態が労働市場にも存在し、その役割を超える女性の多様な潜在的才能は生かされていません。

(2018年2月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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