妊産婦のメンタルヘルスケア

周産期のメンタルヘルスケアは母児の命にかかわる重大な問題です。周産期のうつ病は、その大半が妊娠中から産後1か月までの間に発症します。症状の主体は、気分の障害である抑うつで、涙ぐむことなどがよくみられます。また、他の症状は、表情が暗い、意欲や集中力の低下、睡眠障害、食欲の低下などです。このような状態になると子育てが思うようにできないため、母親として自責の念に駆られ、重症になると自殺を考え、赤ちゃんと一緒に死んでしまいたいと思うようになります。不安障害はうつ病とならんで頻度も高く、女性における発症の時期は妊娠・出産・子育ての時期と重なることが多い疾患であります。
周産期のメンタルヘルスの課題は全ての女性に起こりうる問題であり、周産期にかかわる保健医療専門職全員が基本知識として身につけるべきです。女性にとって周産期はもっとも不調をきたしやすい時期であり、そのことに配慮した対応が必要です。全ての周産期の医療・保健・福祉スタッフには、全ての妊産婦の言葉を傾聴することが大切です。不調をきたした場合、その大半は軽症から中等症であるので、心理士のケアが必要になります。ただし、より周産期のメンタルヘルスに特化した専門的な知識を学んだ助産師、保健師が対応、ケアすることもあります。さらに、現実検討や意思疎通が困難で切迫した自殺念慮があるなど重症の症状を呈した場合は、薬物療法や行動制限、侵襲的心理介入が必要になり、その場合には精神科医による治療が必要になります。

(母子保健 第710号)
(吉村 やすのり)

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