子宮頸がんとHPVワクチン―Ⅳ

HPV感染後の経過
子宮頸がんの発生過程を図 5 に示します。まず発がん性 HPV が子宮頸部の粘膜の一番深い部分の細胞に感染し、ウイルスが子宮の細胞内に共存する状態となります。この状態は軽度異形成(CIN1,LSIL)と呼ばれます。健康な女性では、ウイルスが感染しても、免疫の働きなどにより約 90%の人は一過性の感染で終わり、2年以内にウイルスは自然排除されます。しかしながら環境因子や免疫低下など何らかの原因でウイルスが排除できず、感染が持続した人の中の一部は、HPV の DNAが細胞に組み込まれた状態となります。数ヶ月から数年以上を経て一部は浸潤がんへと進展していきます。この前がん病変は中等度異形成〜高度異形成/上皮内がん(CIN2〜3,HSIL)と呼ばれます。
高度異形成(CIN3)を放置すると、約 30%が浸潤がんへと進展します。HPV 持続感染から前がん病変になるのは 1 割弱で、最終的に浸潤がんになるのは 1%またはそれ以下であると推計されます。日本において子宮頸がんが、年間 1 万人以上発生することから、HPV 持続感染者、さらにはその母集団である一般女性における HPV 感染がいかに多いかがわかります。

(「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」 日本産科婦人科学会)
(吉村 やすのり)

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