定年消滅のための3つの要因―Ⅱ

社会保障要因
定年消滅の第2の要因は、社会保障制度面からの要請です。2004年の公的年金制度の法改正により、社会保障給付費の中で、唯一年金だけが微減となる見通しです。現在、政府が進める年金改革は、引き続き負担を固定したうえで、将来の年金給付水準をいかに底上げするかに焦点を絞っています。給付調整方式の見直しや非正規雇用への厚生年金適用拡大などとともに、個々人の選択で大きな給付水準の底上げが可能となるのが、繰り下げ受給です。
年金の受給開始年齢を標準の65歳から1カ月遅らせるごとに、年金が0.7%増額され、最大70歳の受給開始で42%アップします。繰り下げ受給は年金財政に中立で、増額された年金は一生涯続きます。今年の法改正により、繰り下げの上限は75歳、84%増額まで拡大されます。厳しい経済前提の下でも1~4年繰り下げれば、給付水準を維持できることになります。しかし、人口の大半を占める中間層にとっては、繰り下げ受給制度があるかないかによって、老後の生活設計は大きく変わってきます。高齢期就労のハードルをいかに取り除くかは、年金の充実化のためにも政府にとって重要な課題となっています。

(週刊東洋経済 10月17日号)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。