幼保無償化による功罪―Ⅰ

次世代への投資
2019年10月に開始された幼児教育・保育の無償化は、開始から半年間の予算は500億円ほど引き上げられ、4,375億円にも達しています。日本での家族関係社会支出が国内総生産(GDP)に占める割合は、他の先進国と比べかなり低いため、次世代への投資を拡大したという意味では大いに評価できます。
保育の受け皿は広がり続けており、待機児童も減少してきています。保育所を整備するのは、主に女性の就業促進のためと考えられがちですが、保育所には幼児教育の場として重要な位置を占めています。保育所の利用が子どもの言語発達を促し、社会経済的に恵まれない家庭の子どもの多動性と攻撃性を減少させることが明らかにされています。保育と幼児教育は発達に好ましい影響を有し、時にはその後の人生を変えるほどであることが知られています。これは本人にとってだけでなく、社会にとっても大きな経済的利益をもたらすことになります。所得増加は納税額の増加を意味し、犯罪と社会福祉利用の減少は財政支出と社会的費用の削減につながります。
保育所の利用はフルタイムでの共働き家庭が優先されています。そのため社会経済的に恵まれない家庭に多い非正規やパートタイム労働者の子どもは、待機児童になりやすくなっています。待機児童、つまり保育恩恵を受けられない子どもがいることは、社会全体に大きな利益をもたらす投資機会が十分に活用されていないことになります。保育の供給を一層増やし、こうした家庭の子どもが保育所を利用できるようになれば、社会的にも意義がより大きくなります。

(吉村 やすのり)

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