幼保無償化による功罪―Ⅲ

世帯年収による負担軽減額の差違
無償化以前は家計所得に応じた利用料金を払う応能負担だったため、低所得世帯の保育料は無料あるいは低額だった一方、高所得世帯は高い傾向がみられました。しかし、一律に無償化した結果、年収1,130万円以上の世帯は年52万円の補助金を新たに受け取ることになっています。一方、年収260万円以下の低所得世帯に対しては追加的支援はないままです。
日本の子どもの貧困率は、経済協力開発機構(OECD)平均よりも高く、低所得世帯の子どもが十分な支援を受けているとは言い難い状況にあります。多くの困難に直面する低所得世帯への支援が不十分なまま、高所得世帯への実質的な所得移転が優先されるべきではなかったとの意見もみられます。
社会的に不利な状況に置かれている子どもたちへの支援は将来、社会全体に利益をもたらすことになります。次世代に投資するならば、低所得世帯の子どもたちに手厚くするのがより効果的な方法です。幼児教育は効果的な投資であることを踏まえ、長期的視野に立った政治的決断が求められます。

(2020年4月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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