待機児童問題に憶う

 子どもの数が減っているのに、保育園に入れない子どもが増える背景には、様々な社会の変化があります。女性の社会進出や景気低迷による収入減などにより、共働き世帯が増え続け、保育ニーズが高まったことによります。一方、高齢化で年金や医療、介護費が膨らむ中、子ども・子育て支援に対する政策の優先順位は低く、受け皿整備は完全に出遅れた状況にあります。過酷な保活の原因となる待機児童問題は、20年以上前から解決されずにきました。安倍政権は待機児童ゼロ達成を掲げ、昨年秋には1億総活躍社会実現へ、2017年度末までの整備目標を10万人分上積みして50万人分としています。
 待機児童解消は、少子化対策の一丁目一番地です。しかし、待機児童解消には、保育士確保と保育園の用地確保という2つの壁が立ちはだかっています。賃金の低さから保育士のなり手が追いつかず、保育園に適した土地を探すことも大変です。さらに自治体による公園を転用して保育園を建設しようとする計画が、住民の反対によって開園できない状況もあります。地域住民の理解の無さは由々しき問題です。若い世代がどんどん入ってきて、就学前の子どもが増えることによってのみ、地域の発展が望めます。現在の都市部の状況では、保育園をいくら作っても需要の伸びに追いつけません。

(2016年11月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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