新型コロナ研究論文の集約

G7にEUなどを加えた18カ国・地域は、新型コロナウイルスの研究に関する協力を始めています。米国のアレン人工知能研究所などが設けた新型コロナ研究に関するデータベースであるCORD-19で、各国の論文や研究データを一元管理しています。データベース内の学術記事数は、3月中旬時点で約2.4万本でしたが、枠組みが発足してから約2カ月で、2.5倍の約6万本に増えています。集約した論文は、AIを使ってテーマごとに整理検索しやすくしています。
新型コロナは、検査や治療、臨床試験のやり方が確立していません。異なる手法を試す国同士で情報を共有すれば、研究の効率が上がります。情報共有は、米科学技術政策局の呼びかけで始まりました。当初は米国、日本、英国、ドイツ、イタリア、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、ブラジルの10カ国でした。その後、韓国、シンガポール、アイルランド、スイス、EUが加わり、18カ国・地域に拡大しています。欧州やアジアを中心とし、民主主義や法に基づく自由を重視する共通点があります。参加国はさらに増える可能性があります。
今回の枠組みには中国とロシアは加わっていません。背景には新型コロナへの対応を巡る米中対立などがあります。最初に爆発的な感染が発生した国で、治療や検査に関する論文は多くみられます。武漢の封鎖など強力な措置によって感染を抑え込み、経済活動再開にこぎ着けています。こうした知見も含めて今後の対策に生かすべきだと思われます。

 

(2020年5月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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