新生児期の原因不明疾患のゲノム解析

原因不明で診断がつかない病気を、最新の遺伝情報(ゲノム)の解析で突き止める取り組みが進んでいます。診断がつけば、検査や治療方針の変更につながります。全国の新生児集中治療室が参加する難病ゲノムプロジェクトである未診断疾患イニシアチブ(IRUD)が実施されています。診断が難しい患者をかかりつけ医が拠点病院に紹介し、遺伝情報を解析して診断をつけます。
両親と赤ちゃんのゲノム解析をし、原因が分かれば、手探りの治療ではなく、赤ちゃんにとって最善の治療方針を考えることができます。病気の原因が分かることが、治療法の開発につながることもあります。
しかし、病気の原因は遺伝子の変異だけとは限らず、遺伝子を調べても全ての病気の原因が分かるわけではありません。また、親が病気を発症していなくても、原因となる遺伝子の変異を両親がともに抱えている場合、その子どもが病気を発症することがあります。また、両親ともに原因となる変異がなかったとしても、赤ちゃんの段階での突然変異によって、病気が生じることもあります。
こうした遺伝性の病気の診断にあたっては、医療側は親の側に対し、赤ちゃんの状態について、正確かつ丁寧に説明できるようにする体制づくりが欠かせません。今後予測される合併症やフォロー体制、公費医療、福祉制度についても、情報提供が必要になります。遺伝カウンセラーや、患者会で同じ病気の人と情報を交換することで、将来に希望を持てるようになることもあります。きめ細かな対応が必要で、医師、看護師、遺伝カウンセラー、心理職などのチーム医療体制の構築が不可欠です。

(2022年8月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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