新酸素療法による呼吸管理

新型コロナウイルス感染症に対して、新しい治療法が広がっている。鼻に差し込んだチューブから多量の酸素を送り込む方式で、人工呼吸を使うような重い症状でも、意識を保ったまま過ごせます。この治療法は、ネーザルハイフロー(高流量鼻カニュラ酸素療法)と呼ばれています。ネーザルハイフローは、人工呼吸と従来式の酸素療法との中間的な位置づけにあたります。

肺の機能が落ちた患者が、鼻に差し込んだ専用の管(カニュラ)を通して酸素を吸入します。従来式の酸素療法と外見は似ており、意識のあるまま治療できます。特徴は、従来式に比べて10~20倍の多量の気体を鼻から送り込むことができます。肺に酸素が安定的に届き、人工呼吸に近い効果が期待できます。これまで肺炎が悪化した場合は、人工呼吸にすぐに移行していました。より重症まで対応できますが、麻酔で意識をなくすため筋力が落ち、長期のリハビリが必要になるなどの課題もあります。
人工呼吸を前提に転院してきた重症患者でも、意識を保ったまま回復できる例も多いとされています。医師や看護師が、24時間注視する人工呼吸に比べ、必要な人手が3分の1に減る利点もあります。集中治療室で過ごす日数が短くなるなどの効果も出ています。
日本呼吸器学会の調査によれば、ネーザルハイフローの実施施設は、昨年6月の12%から今年2月には49%に増えています。肺に大量の酸素を送り込むため、口や鼻からウイルスを含む飛沫が飛んで院内感染につながる恐れがありますが、患者がマスクを着けたり、空気が外に漏れない陰圧室で使用したりすれば、リスクは下げられます。

(2021年8月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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