日本から中国への研究者の流出

文部科学省の調査によれば中国は、論文の総数も引用数がトップ10%に入る質の高い論文の数も、ここ数年で米国を抜き世界1位となっています。一方の日本は20年前、トップ105論文数で4位でしたが、10年前に6位に低下しています。今年の調査では12位となり、ついに上位10カ国から転落しました。
日本の研究力が低下した背景には、予算が限られる中、研究分野を選択し、集中的に投資する選択と集中政策の影響があると思われます。予算が一部の大学に偏りがちな上、特に基礎研究分野は研究費を獲得しにくくなっています。人件費などに充てられる国立大学の運営費交付金の減少や横ばい傾向も続き、若手研究者が常勤ポストを得にくい状況が続いています。
日本の博士号取得者数は2006年度の1万7,860人をピークに、近年は約1万5千人ほどで推移しています。一方で中国の博士号取得者数は、2005年度の2万6,506人から2020年度は6万5,585人と、約2.5倍に増えています。中国は科学技術への投資も積極的で、2020年の研究開発費総額は59兆円と、米国に次ぎ世界2位でした。日本は17.6兆円に過ぎません。基礎研究費も増える傾向にあり、1991年は日本の20分の1以下でしたが、2020年は約3兆5千億円と、日本の2兆7千億円を上回っています。
中国は国家のもと大学改革を進め、学長を始め経営陣に多くの裁量を与えています。その結果、自由に研究できる環境が生まれ、若い研究者でも実力があれば昇進でき、研究費も取れます。また、海外で学んだ優秀な研究者も積極的に呼び込んでいます。研究費が潤沢で、研究時間を十分に確保できる中国へ行こうと考える日本の研究者も増えています。

(2022年12月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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