日本の少子化の深刻度

日本の人口は1970年代半ばから減り始め、昨年は79万9,728人が生まれています。統計のある1899年以降で初めて80万人を割り込みました。第二次ベビーブームで200万人を超えていた1974年と比べると、4割以下の水準です。1人の女性が生涯で産む子どもの数に相当する合計特殊出生率は、2021年時点で1.30でした。2.07を上回らなければ、現在の人口を保てないとされています。
国連の推計では、総人口に占める0~14歳である年少人口の割合は、世界全域では25.4%ですが、日本は11.8%です。若い人が減れば、子どもが生まれる数は益々減っていきます。国立社会保障・人口問題研究所によれば、今の日本の人口は約1億2,500万人ですが、30年後の2053年には1億人を割る見込みです。
バブル崩壊以降の経済低迷もあり、安定した職に就けず結婚にふみ切れない人が増えています。コロナの流行も出産を控える動きに影響しています。結婚や出産への意識や行動が変わってきています。お見合いなど出会いの機会が減り、結婚して家庭をもつという価値観に縛られない人が増えています。晩婚化も進んでいます。子育てや教育にかかる費用が高く、希望どおりの人数の子どもをもてない人が多くなっています。少子化がこのまま進むと、若い世代が高齢者を支えるように設計されている社会保障の制度が維持できなくなってしまいます。子どもの数が減ると、いずれ人口も減るため、経済規模も小さくなって国力も低下してしまいます。
政府が少子化を問題だと認識したのは、1990年代でした。1989年の合計特殊出生率が1.57と過去最低を記録したことによります。1990年以降30年にわたって、保育の拡充、その後に雇用、仕事と家庭の両立支援、結婚支援などの取り組みの対象を広げてきましたが、十分な効果が出ているとは言えません。
少子化対策につながる、子ども・子育てに関連する日本の公的支出は少ないと言われています。GDPに占める割合は、少子化問題に先がけて取り組んできたフランスやスウェーデンに比べ、日本は半分程度です。岸田首相は6月までに、将来的なこども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示すると説明しています。児童手当などの経済的支援や、保育などの拡充、そして育休や働き方改革などを中心に異次元の少子化対策に取り組むとしています。

(2023年3月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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