日本の研究力低下

東京医科歯科大学と東京工業大学の統合協議は、政府の大学ファンド構想で加速しています。有力校同士の統合は、日本の研究力復活への道筋を探る先駆けとなるかもしれません。ファンドの運用は昨年度末に始まりました。政府は年3,000億円の運用益を目標に掲げ、2024年度以降、国際卓越研究大学に認定した数校に、1校あたり年に数百億円を配分する方針です。
背景には、大学の研究力の深刻な低迷があります。科学技術・学術政策研究所の調査によれば、自然科学分野で引用数が上位10%に入る質の高い論文数(2018~2020年平均)は、中国が首位で日本は12位でした。20年前は米国、英国、ドイツに次ぐ4位でした。当時のトップ10のうち、圏外に陥落したのは日本とオランダだけです。
日本の人口100万人当たりの博士号取得者数は、2006年度の140人から、2019年度はドイツや英国の半分以下の120人に減りました。原因の一つが、国立大学が人件費や通常の経費に充てる運営交付金の減額です。多くの国立大学、任期付きポストを増やした結果、若手研究者の雇用環境は不安定化し、学生の博士号離れが加速しました。

(2022年8月10日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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