母体血による新型遺伝学的検査(NIPT)

 医療機間を名乗る都内の民間団体が、母体血による染色体異常の可能性を調べる新型遺伝学的検査を学会の認定を受けずにあっせんしているとの新聞報道がありました。この新型検査は、現在日本医学学会が認定した74病院においてその実施が認められています。検査結果によっては人工妊娠中絶につながる可能性もあり、遺伝カウンセリング体制の整備などを条件として実施が認められています。日本産科婦人科学会は、認定病院で行うことや、検査対象はダウン症など3種類の染色体の病気に限定しています。
 しかし、この団体は3つの病気以外に、産み分けにつながる性別判定や、ターナー症候群などの性染色体の異常の検査もできるとホームページで宣伝しています。日本産科婦人科学会では、35歳以上の高齢妊婦が条件となっていますが、この団体は年齢を条件としていません。認定施設が限られているので、広く検査を望むカップルのために、どの施設でも検査が受けられることを望む声も多く聞かれます。しかし、このNIPTだけではなく、他の出生前検査である羊水・絨毛検査に対しても広く登録報告制とし、遺伝カウンセリングの充実を図ることが大切であるとする出生前診断の方向性に、著しく反する行為であります。こうした行為は、放置すれば妊婦への十分な情報提供なしに安易なスクリーニング検査がはびこる恐れがあり、出生前診断の適切な運用を図る上で許されるべきではないと考えられます。


(2016年10月13日 読売新聞)


(2016年10月14日 読売新聞)

(吉村 やすのり

 

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