海外子女に対する支援

この半世紀で海外子女を取り巻く環境は大きく変わりました。高度経済成長期からバブル後の停滞期に至るまでに、グローバル化の波が幾重にも押し寄せ、海外子女数は2018年で約8万4千人と50年前の約10倍になっています。
しかし近年は日本企業の海外拠点や工場スタッフの現地化、駐在員機能の見直しで、海外派遣者の減少が見られるようになっています。新型コロナウイルス禍による駐在員人事の滞留の影響も大きく、並行して子女数の伸びも鈍化しつつあります。生徒の減少による日本人学校の経営問題が現実化しています。
海外子女の教育ニーズも多様化してきています。以前まで日本人学校に求められてきた日本と同等の教育は、2位に後退し、在外ならではの多様な経験がトップになっています。学力伸長、コミュニケーション能力向上、海外文化を学ぶが続いています。日本人学校に通う子どもは年々減少しています。現地校やインターナショナルスクールなどのみに在籍する子どもが増えています。
多様化する教育ニーズに対応するには、在外教育施設の教育体制の充実が必要となります。日本人学校が海外子女教育だけでなく、現地の人々に日本を身近に感じてもらえるような日本文化の発信拠点としての機能を強めることも重要です。
海外で学んだ子どもたちは、自己責任、すなわち自分自身で考え判断する力と、異文化に日常的に触れることで育まれる広がりのある価値観を併せ持っています。しかし、現在の国内の均質な教育体制の中では、帰国した子どもたちは特性を発揮できず、可能性の芽を摘まれ埋没してしまうケースも多くみられます。彼・彼女らを日本の将来のコモンセンスを創造する原動力として育て、支援していくことが大切です。

(2022年1月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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