特別養子縁組

 特別養子縁組とは、実父母が育てられない原則6歳未満の子どもと、子どもが欲しい別の夫婦が縁組し、戸籍上の親子になる制度です。夫婦が改定裁判所に申し立て、6カ月以上の試験養育期間後、家庭裁判所の審判で成立します。この特別養子縁組は、民間事業者や児童相談所が仲介します。201610月現在、縁組仲介を手がける民間事業者は23です。この10年でほぼ倍増しました。民間事業者による縁組の成立件数(2015年度)も186件で、5年前の3倍近くになっています。
 厚生労働省研究班の調査によれば、英国やドイツなどでは養子縁組は法律に基づき、どの機関で縁組してもほぼ共通の研修や支援が受けられますが、日本には現在統一基準がありません。国は、事業者をいまの届け出制から自治体による許可制に変える予定で、事業者の質のばらつきの是正を図ることにしています。営利目的の縁組への監視を強めるとともに、縁組後の継続的な支援や研修の充実などを検討しています。行政機関である児童相談所が仲介した縁組件数にも、地域によってばらつきがあります。縁組に積極的に取り組む自治体がある一方、仲介経験が不足していたり、人手不足だったりして縁組業務の優先順位が低くなる自治体もあります。
 ネットを通じて特別養子縁組を仲介するサイト「インターネット赤ちゃんポスト」が現れてきています。通常、赤ちゃん1人に50組前後の申し込みがあり、ポイント制で候補を決めています。職業では医師、会社員などが細かく点数化され、高収入で安定した職業ほど高くなるほか、専業主婦も高得点になります。子どもを迎えるための自前の研修はなく、行政が行う研修を受けると加点されます。高得点の夫婦ほど養育環境が良いとみなされ、優先順位が上がります。通常の出産にかかる費用のほかに、妊娠中の女性の生活費も養親側に負担させることが多く、1件の縁組で支払う平均金額は200万円前後です。便利な仕組みかもしれませんが、育てる家庭の調査や研修が不十分では、子どもが途中で投げ出される懸念もあります。スピード重視の安易な縁組では、子どもの幸せは守れません。

(2017年9月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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