現物給付の充実

 わが国においては、高齢者支援が優先され、家族手当、出産育児休業給付、保育、就学前教育などの支援を行うための家族関係社会支出は、外国に比べると極めて低率です。家族関係社会支出のGDP比でみると、子育て支援の拡充で出生率の回復したフランス2.91%やスウェーデン3.63%、イギリス3.85%の半分以下です。子育て支援に割ける財源が限られているという状況で、2000年代は児童手当・子ども手当といった現金給付が政治的に優先されました。増額や支給対象拡大は有権者に分かりやすく、選挙で訴えやすいことにもよります。
 少子化が進む一方、待機児童問題が注目を集めています。2017年度末までに待機児童をゼロにすると決意を示していましたが、その目標達成には厳しいものがあります。待機児童問題は、少子化対策の一丁目一番地です。保育所に入りにくいがために、女性が出産退職した時の機会費用損失を考えてみるべきです。保育サービスの拡充は現金給付よりも経済支援効果が大きいものがあります。現金給付より現物支給を優先すべきです。
 1990年代は、働く女性の増加を少子化の原因と考えられていました。しかし、欧米は両立支援環境を整備し、出生率を2.0近くまで戻しました。働き方改革と保育サービスの拡充、将来に希望を描ける若者世代の処遇改善により、少子化を克服してきました。女性の労働率向上が少子化の原因とならないことを示しています。

(吉村 やすのり)

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