生産年齢人口の伸び悩み

先進国で人口成長が鈍っています。米国は少子高齢化が続くなか、新型コロナウイルスの感染拡大もあり、2020年の出生数は、約40年ぶりの低水準になっています。日本はすでに人口減少が進んでいます。人口は労働力や様々な市場規模に直結します。
米疾病対策センター(CDC)の発表によれば、2020年の米国の出生数は360万5,201人で前年比4%減で、減少は6年連続で1979年以来の低水準です。1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は、1.64と過去最低を更新しています。晩婚化や若年層の所得低下による出生数の構造的減少に、コロナ禍が拍車をかけています。

 (2021年5月6日 日本経済新聞)

人口の伸びが小さくなると高い経済成長が見込みにくくなってきます。米国で生産年齢人口(15~64歳)が、平均で前年比1.45%増だった1960年代前半は、実質GDPの伸び率は平均で約5%でした。近年、生産年齢人口の増加率は1%を割り込み、成長率も2%台前半~1%未満となっています。
すでに人口減少が始まっている日本は深刻です。日本は、1960年代の生産年齢人口は平均1.8%増で、実質成長率は10%程度と高かったのですが、1990年代後半から生産年齢人口は減少局面に入り、2000年代以降マイナス幅を広げています。成長率も2000年代は0.5%と低迷しています。
欧州でも生産年齢人口が減少し始めています。ユーロ圏の2020年の実質成長率はマイナス6.6%の大幅な低下になりましたが、それ以前から生産年齢人口は減少に転じており、1~2%程度の比較的低い成長にとどまっています。
新型コロナのワクチン接種が進んで経済が回復すれば、米国の出生数は改善する可能性が高いと思われますが、先進国は、少子化に伴う構造的に共通した問題を抱えています。人口をいかに増やすかは、米国だけでなく日本や欧州など先進国に共通した課題となっています。

(2021年5月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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