私大の経営状況の悪化

私立大学の経営改革が行き詰まっています。全国600校以上ある私大の運営法人の4分の1が、慢性的な経常赤字に陥っています。大学が増える中で少子化が急進し、赤字校の7割は学生を計画通りに獲得できていません。
日本私立学校振興・共済事業団によれば、2021年度の私立大学全体の入学定員充足率は99・8%と、調査開始以来初めて100%を下回り、4割超の私大が定員割れとなっています。18歳人口の減少に加え、新型コロナウイルス禍で留学生が減った影響とみられます。定員充足率は、小規模校や地方の私大ほど低くなっています。
2018~2020年度の経常収支が3年連続赤字だったのは139法人で、15法人は負債が運用資産を超過しています。学生の定員充足率が低迷し、収入が落ち込むケースが目立っています。少子化で収支が先細る一方、資金需要は高まっています。デジタル化やグローバル化の浸透により、社会に求められる人材の育成には新たな投資が欠かせません。
海外ではキャンパスを持たない大学も生まれています。全授業をオンラインで実施して支出を抑えている大学もあります。授業料は米トップ校の半額以下で、入学者の100倍近い受験者を集めています。日本の18歳人口は、今後も10年ごとに10万人以上のペースで減少する見通しです。収支のバランスの健全化は、各大学の対応だけでは追いつきません。官学が連携して高等教育の枠組みを再構築していく必要があります。

 

(2022年4月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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