私立大学への公的支援

 高等教育への公的支援をもっと増やす必要があります。文部科学省も経済協力開発機構(OECD)加盟諸国の中で高等教育に対する公的支出で、日本は最低基準だというデータがよく引用されます。しかし、学生1人当たりの支出額を国立と私立に分けて国際比較すると、国立はトップクラスです。OECD諸国で日本が低位なのは、私学への支援です。授業料の額や減免措置を受けられる学生数の格差はもちろん、研究に専念する教員は私学助成の対象になりません。研究基盤の整備についても、私学は不合理に冷遇されています。私立大学の運営は、主に国費ではなく学生の親の負担に頼っています。
 私立大学は歴史の転換点で大きな役割を果たしてきました。明治時代に帝国大学と異なる教育理念に基づいた私立大学が誕生し、幅広い市民層の知的水準を高めてきました。慶應義塾や早稲田大学などがその代表例です。戦後の復興期に大学進学率は急上昇しましたが、その大部分を吸収したのが私立大学でした。多くの学生に高等教育を提供してきました。高度経済成長は私立大学に支えられたといっても過言ではありません。今後も私立大学の果たすべき役割は大きいと思われ、私学への助成を増やすことが求められます。

(2016年7月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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