科学基礎研究に対する支援

 研究者を支える公的研究費には大きく3種類あります。国立大に人件費なども含めて配分される運営費交付金は、今年度約1945億円です。ここから研究室に資金が配分されますが、この10年間で約1割減っています。個別の研究テーマを支援するのが科研費で、科学研究費補助金などが含まれます。公募で選ばれる研究資金は競争的資金と呼ばれます。科研費はここ数年横ばいで、今年度は約2,300億円、研究の新規採択率は約4分の1です。この他、戦略的創造研究推進事業など、優れた研究や政策課題に沿った研究に配分される大型の研究費があります。近年は実用化に結びつく研究が重視される傾向があります。
 国の基礎研究力を測る指標となる学術研究全体の総論分数で、日本は約10年前に米国に次ぐ世界2位でしたが、近年は5位に後退しています。影響の大きい論文の数も4位から10位に転落し、中国や欧州諸国の後塵を拝しています。運営費交付金減少の影響で、5年など任期が限られた研究者が増え、短期間で成果を出すことを迫られることも、成果が見えにくい基礎研究を弱くしています。

(2016年10月8日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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