秘密計算によるデータ分析・共有

秘密計算とは、データを暗号化した状態で分析する技術です。今は通信したりサーバーに保存したりする際にはデータを暗号化していますが、分析する場合はデータを生の状態に戻す必要があります。秘密計算による暗号化によりデータを守りつつ、AIを使った高度な分析や企業間のデータ共有が容易になります。
秘密計算には、2つの代表的な技術方式があります。準同型暗号は、鍵をかけるイメージでデータを変換し、外部から解読できない暗号の形にして計算する方法です。秘密分散は、データを断片に分割して複数のサーバーで計算します。そのため、仮に個別のサーバーがサイバー攻撃を受けても、機密情報が盗まれるのを防ぐことができます。
データ活用で欠かせないのが、プライバシー保護との両立です。企業間のデータ共有や連携は、これまでも期待されてきましたが、二の足を踏む企業は多いのが現状でした。重要な資産である顧客データなどを社外に持ち出すことに抵抗があり、情報流出への警戒も強いためです。秘密計算はこうした状況を変える潜在力を持っています。
最大の課題は処理速度です。暗号化したデータの計算は、生データによる計算に比べ少なくとも数倍の処理時間がかかり、特に準同型暗号と呼ぶ方式は速度が遅いのがネックとされています。秘密分散方式の場合、導入する時には複数のサーバーにまたがってシステムを構築する際に手間がかかります。導入にはコストもかかり、秘密計算に期待する企業の多くも、費用対効果を見極めている段階です。

(2021年7月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。