第4の革命

経済成長の代償として、世界は地球規模での気候変動に直面し、成長の源泉であった人口は減少に転じようとしています。産業革命後、世界の気温はおよそ1度上がり、このままなら20~40年後に上昇幅は2.4度になってしまいます。温暖化を食い止めようと、世界がこぞって脱炭素を掲げ始めました。日本政府も、2020年10月に温暖化ガスの排出量を2050年までに実質的になくすカーボンゼロを宣言しています。このカーボンゼロが、農業、産業、情報に次ぐ第4の革命と呼ばれています。
エネルギーとともに、世界の経済成長の源泉だった人口増大にも陰りが見え始めています。ホモ・サピエンス登場から30万年、人口は近い将来、減少局面を迎えます。国連は、2100年に世界人口がピークの109億人に達すると予測しています。経済成長、物価、生産性、社会保障、人口増を前提とした時代が終われば全てが変わります。今後も持続可能な世界を築いていくためには、人口減少とともに気候変動という2つの地球規模の難題を解決していかなければなりません。
日本は、1970年代の2度のオイルショックを経て省エネで世界をリードしていましたが、脱炭素では欧州などに周回遅れとなってしまいました。温暖化ガスの排出による気温の上昇に伴う気候変動は、世界が取り組むべき喫緊の課題となっています。日本は、世界に先駆けて人口減少、生産年齢人口の減少に直面しています。いかにして第4の革命であるカーボンゼロを実現し、成長戦略に結び付けられるかにわが国の命運は委ねられています。カーボンゼロの達成は非常に難しいと考えられていますが、同時に低迷している日本に再成長をもたらす可能性を秘めています。

(2021年10月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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