膵臓の作製

 東京大学の研究グループは、ラットの体内でマウスのiPS細胞から膵臓を作り、この膵臓の細胞を移植して糖尿病のマウスを治療することに成功しました。異種の動物で臓器を作り、治療効果を確かめたのは世界で初めてです。
 膵臓を作れないように遺伝子操作したラットの胚に、マウスのiPS細胞や胚性幹細胞を注入すると、誕生したラットにマウスの細胞から育った膵臓ができました。この膵臓を取り出し、インスリンなどを分泌する膵島という組織を、糖尿病のモデルマウスに移植しました。移植後1年間、血糖値が正常な値を維持でき、膵島の働きにより糖尿病の症状が改善しました。膵島は免疫抑制剤をほとんど使わなくても、強い拒絶反応は見られませんでした。


 今後は人での応用を目指し、ブタの体内でサルの臓器を作らせるなどの研究を進める方針だそうです。日本では現在、倫理的な問題があるとして、国の指針で動物の体内で人の臓器を作る実験は禁止されています。こうした研究を続けるには、日本では制約が多く、海外で実験をしなければならないような状況は改善の余地があります。

(2017年1月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。