若年女性アスリートの健康障害―Ⅷ

月経痛に対する服薬

 月経痛に対して服薬しないが43.5%、時々服薬が38.3%、毎回服薬が18.1%でした。服薬すると答えた選手のほとんどが、市販の鎮痛薬を使用していました。全体の55.2%が鎮痛薬を使用し、低エストロゲン、プロゲスチン配合薬(LEP)を使用していたのはわずか1.6%にすぎませんでした。服薬効果に関しては、94.5%が良好な効果を得ていました。
 低用量経口避妊薬(OC)・LEPの使用経験については、現在服用が3.2%、服用既往が6.0%、既往なしが90.8%でした。OCLEPの服用開始理由は、月経日調整、月経痛の順でした。月経日の調整を行ったことがあるかの質問に対し、「ない」が94.8%、「以前行ったことがある」が3.6%、「今も時々行っている」が1.0%「継続して行っている」が0.6%でした。
 本研究におけるアンケート調査では、女子トップ選手において月経困難症で薬剤を使用すると回答した選手は全選手の約30%でしたが、月経困難症が運動に支障をきたすと答えた選手は全選手の53%と高い値を示していました。つまり月経困難症によって運動に支障をきたしていながら、薬剤を使用せず我慢している選手が相当いると推測されます。症状が十分にコントロールできていなければ、QOLの低下はもちろん、選手としてのパフォーマンス低下にもつながります。本調査での女子選手におけるOCLEPの全使用率は約3%であり、一般女性の使用率とほぼ同じと考えられます。その使用目的は月経痛対策よりも月経調整が主となっています。
 欧米においては83%の女性選手がOC・LEPを使用しているとの報告があります。一般女性のOC・LEPの使用率も7~8割と本邦に比べ非常に高く、選手においてもごく身近で手軽に使用できる薬剤として認知しています。OC・LEPのなどのホルモン剤投与が選手の身体構造・機能や競技パフォーマンスに及ぼすことを認識しています。欧米では、女子選手がいかにOC・LEPを有効に利用し、能力向上へつなげるかということへの関心の高さがうかがわれます。

(吉村 やすのり)

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