面前DVと児童虐待との連鎖

DVと虐待は、どちらも家庭内で起きる暴力です。子どもの前で起きる暴力です。子どもの前で配偶者や家族に暴力を振るう面前DVも、心理的虐待にあたります。配偶者に対して暴力的に支配する人は、子どもに対しても同じような関係を築くことが多くなっています。
内閣府によるDV被害者らの支援にあたる全国の配偶者暴力相談支援センターに実施した調査によれば、子どものいるDV相談者約3万7,000人のうち、面前DVを含めて約6割で、子どもへの虐待もあったと回答しています。
児童福祉法では、児童相談所が必要だと判断すれば、保護者の同意なくて子どもを一時保護できますが、DV防止法は相談者の意思がないと一時保護できないなど、運用や考え方に違いがあります。子どもへの虐待の加害者である母親を、DVの被害者として支援する必要も出てくるなど、単純に割り切れない問題もはらんでいます。
2018年に東京都目黒区、2019年に千葉県野田市で起きた児童虐待死事件は、夫主導の虐待に妻が加担したなどとして、いずれも有罪判決が確定しています。これら2つの事件においては、妻へのDVという共通の問題がありました。DVと虐待が同時に起こるケースが多く、児童相談所の職員がDV支援について、DV担当の職員が虐待について学ぶことも重要です。

(2021年12月1日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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