頭頸部がんの治療

頭頸部がんは、舌などの口腔、鼻の奥からのどにつながる咽頭、気管の入り口の喉頭、鼻・副鼻腔などにできるがんです。年間新規患者数は、推計で口腔・咽頭がんが約2万3,000人、喉頭がんは約5,300人です。50歳代以上の男性が発症するケースが多く、喫煙や飲酒の影響が大きいとされています。ただし、咽頭がんの中には、HPVなどのウイルス感染によるものもあります。
口腔がんの多くを占める舌がんは、手術を行います。手術後に抗がん剤と放射線治療を併用した化学放射線療法を行う場合もあります。咽頭は、上、中、下の3部位に分かれます。鼻の奥の上咽頭は、手術が難しい部位で、放射線治療を選ぶことが多くなっています。
中咽頭、食道につながる下咽頭、気管につながる喉頭のがんは、早期なら、手術か放射線治療を選びます。がんが小さい場合などには、口から内視鏡を入れる経口的切除も行われています。舌や声帯などを残すために放射線治療を選ぶことも多くなっています。がんの形に合わせて放射線を照射するIMRT(強度変調放射線治療)を導入する病院が増えてきています。
適切な治療を行うには、頭頸部外科、放射線科、腫瘍内科などの連携が重要になります。リハビリも含め、多職種のチーム医療を行える病院でのケアが必要になります。症状が無くても、胃の内視鏡検査の際に偶然、のどのがんが見つかることがあります。酒量の多い人は、1、2年ごとの検査がお勧めです。
米欧では男性におけるHPVによる中咽頭がんが大きな問題となっています。予防のため、HPVワクチンを男性にも接種する国が増えてきています。HPVワクチンは子宮頸がんのためのワクチンと考えている人が多いのですが、男性における中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどにも有効です。

(2021年9月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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