養育費不払い

貧困状態にあるひとり親家庭が多い背景には、不安定就労と低賃金に加え、養育費が十分に支払われていないことがあります。母子世帯のうち、離婚に際して元夫と養育費の取り決めをしたケースは42.9%に過ぎません。約束が履行され、養育費を受け取っているのはわずか24.3%です。養育費の取り決めが低調な理由として、母子家庭では、相手と関わりたくないが31.4%と最多です。続いて相手に支払う能力がないと思ったが20.8%です。
民法は、子の扶養義務を親に課しており、自分と同程度の生活水準を送らせる思い義務がります。義務履行に欠かせない養育費は、正式な法律用語ではありませんが、民法766条第1項に「子の監護に要する費用の分担」と規定されています。2011年の民法改正で、面会交流の促進とともに初めて明記されましたが、養育費の額を決める方法や支払期間は定めていません。
母子家庭で受け取っている養育費の平均額は約4万3,000円です。裁判や調停で額を決める際の目安となる算定表は、2年前の改定で増額されていますが、支払い義務者の生活水準と比べて著しく低く算定されています。
日本では、当事者間の合意による協議離婚が離婚全体の9割に上ります。養育費の不払い問題は、3月から法制審議会の家族法部会でも議論されています。養育費の請求権を民法に明記することの是非などが論点となっています。

 

(2021年9月20日 東京新聞)
(吉村 やすのり)

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