高齢女性の貧困率の予測

ロスジェネ世代を含む単身・非正規雇用の女性は、約半数が老後に貧困化するという予測があります。国際医療福祉大学の稲垣誠一教授らの調査によれば、約40年後には、未婚、または離別した65歳以上の単身女性のおよそ半数、約290万人が生活保護レベル以下の収入になるとされています。
この世代の女性が問題を抱えるのは、男性と比べて非正規雇用が圧倒的に多いからです。低賃金で年金保険料が払えず、貯蓄も少ない人は、老後に少額の国民年金を受けるか、無年金になります。非正規の単身者は、男性でも経済的に困窮する恐れが高いのですが、正社員率が高いので女性ほど問題化しません。
未婚、離別の単身女性が貧困化しやすい理由は、今の社会保障制度が、大多数が結婚し、生涯連れ添うことを前提に作られているからです。結婚が当たり前ではなくなった時代に、制度が追いついていけていません。男女雇用機会均等法ができて30年以上経つというのに、男女の雇用格差が大きいのも大きな問題です。
40代、50代になっている女性たちを今から正規雇用化しても、将来の貧困化を防ぐ効果は小さいと言わざるを得ません。将来の年金額は過去20~30年の保険料支払いが反映されるためで、貯蓄や投資によって老後の準備をするのも簡単ではありません。今のままでは、最後のセーフティーネットである生活保護を必要とする女性が激増し、制度として回らなくなってしまうことが予想されます。女性が不利な立場に置かれている現在の雇用慣行や公平な社会保障制度を変えていかなければなりません。

(2021年10月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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