高齢者の歯科診療

 厚生労働省研究班の調査によれば、要介護認定を受けた高齢者89.4%で口腔ケアなどが必要でした。しかし、受診したことがある人は全体の3割弱のみです。2014年の患者調査でも年代別の歯科患者数は、6569歳がピークで、70歳以降は患者が減少しています。要介護認定を受けるなどして通院が難しい高齢者らにとって、歯科医が自宅で診療してくれる訪問歯科の存在は大切です。高齢者が、虫歯などで歯を失うと、食事が難しくなって低栄養になったり、肺炎になったりして、健康状態の悪化を招きやすくなります。
 訪問診療の研修を受けるなどの基準を満たし、国に在宅療養支援歯科診療所の届け出をした歯科診療所は、20154月時点で約6,400施設あり、全国の約68,700施設ある歯科診療所の1割にも満たない状況です。体が不自由になったり、認知症になったりすると、歯のセルフケアも難しくなります。歯科医療の必要性が高いのに通院できず、急速に症状が悪くなる患者も多くなっています。歯科の訪問診療は通院が困難な患者が主な対象で、要介護認定を受けている高齢者が多くなります。要介護認定を受けた段階から、定期的な歯科ケアを受けられるように主治医やケアマネジャー、家族が配慮すべきです。私の父は95歳ですが、毎月歯のケアをしており、現在でも22本あります。適切な口腔ケアは生活の質の改善のため大切です。

(2017年8月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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