高齢者の運転

 高齢ドライバーの悲惨な事故が相次いでいます。死亡事故件数全体に占める75歳以上の高齢運転者による事故の割合は、年々上昇傾向が続いています。また、免許保有者が10万人あたりの年齢別死亡事故件数も75歳以上では高くなっています。団塊世代が全て75歳になる2025年には、75歳以上の免許保有者は700万人を超すと推計されています。
 高齢ドライバーの事故を防ぐには、免許証の自主返納が効果的です。しかし、高齢ドライバーの事故が多発し、危ないといわれても車なしでは通院や買い物もできません。自宅に閉じこもるだけでは生きがいも健康も損なわれてしまいます。安全を確保しながら、できるだけ運転が続けられる知恵のある取り組みが求められます。自主返納をさせたいと考えるなら、免許を手放した高齢者の暮らしを守り、生きがいを与えられるような移動支援策をどう進めるかが、行政の大きなミッションとなります。
 設定した目的地まで、目を閉じていても連れて行ってくれるような完全自動運転の実現は、かなり先のことです。メーカーは自動ブレーキなど事故を未然に防ぐ技術の標準装備に取り組むべきです。技術開発により、事故を防げるような安全な自動車を提供することも大切です。また、危険だからやめさせる、といったゼロか100かの選択ではなく、昼間だけ、近隣だけといった時間や地域を限定する免許制度の導入も考えられます。
 改正道路交通法では、75歳以上の免許更新時に受ける認知機能検査で、認知症の恐れがあると判断された人は医師の診断が義務づけられています。認知機能の判断には、医師による詳細なチェックが必要となります。現在の認知機能検査だけでは正確な判定はできません。今後は、75歳以上で運転を希望するには、医師の診断書が必要となるかもしれません。

 

(2017年1月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。