21年ぶりの出生率高水準に憶う―Ⅲ

 2015年の出生率上昇の背景は2つあります。1つが30歳以上の女性を中心とした出生数の増加です。30代の出産数が2年ぶりに増加に転じたほか、40代も高い伸びとなりました。しかし第1子の平均出産年齢は最高を記録しています。1549歳の女性人口も減少が続いており、出生数は基調として減少していきます。もう1つは経済状況の好転です。出生率は最悪期は脱したかもしれませんが、ただ政権が掲げる希望出生率1.8の目標を実現するには今の対応では不十分です。
 出生率が最後に1.8を記録したのは1984年でした。初婚年齢や第1子の出産年齢は今よりも4歳も若い時代であり、共働き世帯も非常に少なかった時代です。こうした晩婚化への対応や、婚姻率の低下を抑える対策も欠かせません。夫婦やひとり親が出産や育児をしていくためには働き方改革も必要です。長時間労働の削減や非正規雇用者の待遇改善を通じて、出産などをしやすい環境を整えなければなりません。そもそも日本は子育てなど家族関係の公的支出が少なく、高齢者向けの社会保障費を削減して、子育て対策に振り向ける必要があります。また、若い世代が子どもを産んでも都市部に流出しないような雇用確保などの地方活性化策も必要となります。

(2016年5月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

 

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