8050問題を考える

内閣府の調査によれば、40~64歳の中高年のひきこもりの人は、全国に推計で約61万3,000人に達しています。ひきこもりの期間は、半数超が5年以上にわたり、長期に及ぶ実態が明らかになっています。ひきこもりの相談も増えています。中高年になったひきこもりの子どもらを高齢の親が支える8050問題が、改めて注目を集めています。

 

ひきこもりや介護、生活困窮など、家族が抱える課題は多様化し、複雑になってきています。家計を支えてきた親が病気や要介護になると、無職のまま中高年になった子どもと共に生活苦に陥る恐れがあります。しかし、親が本人の気持ちや世間体、偏見などを気にして周囲に相談できないまま、地域や社会から孤立することも少なくありません。ひきこもりと事件を結びつける報道などがあるたびに、偏見が強まり、家族らがますます相談できなくなる悪循環に陥る危険性があります。勇気を振り絞って自治体の支援機関などに相談しても、4割以上が利用を中断してしまうとの調査結果もあります。
厚生労働省の有識者検討会は、断らない相談窓口の創設を提言しています。介護、子育て、障害者、生活困窮の4分野の窓口を1か所に集約するワンストップ型や、担当課で相談を受けた後、連携担当職員が関係部署や民間団体と調整しながら支援を行うつなぎ役配置型などを想定しています。厚生労働省は、今後、社会福祉法を改正して包括的な支援窓口の設置を明記し、2021年度からの本格実施を目指しています。家族を地域で孤立させないため、厚生労働省は相談体制の充実など、対策の強化に乗り出していることは評価できます。

(2019年12月12日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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